生ごみ処理機は、何のために買うのか
乾かすと生ごみの重さは約8割減りますが、ごみ袋の枚数はそれほど減りません。減るものと減らないものを分けたうえで、雪国・蒸し暑い地域・それ以外で導入目的がどう変わるかを、47都道府県の気候区分と12機種の公表値から整理しました。
この記事の内容
「元が取れるか」で考えると、答えが出ません
生ごみ処理機を調べていると、たいていどこかで「何年で元が取れるか」という話にぶつかります。
当サイトでも全国1,157自治体のごみ袋の価格と、大手電力10社の単価と、機種ごとの電気代・消耗品費を突き合わせて計算しました。結果は、元が取れる組み合わせが1つも出ませんでした。年間のランニングが最も安い組み合わせでも約7,000円かかるのに対し、生ごみが減ることによる袋代の節約はその何分の1かにとどまります。詳しい内訳は生ごみ処理機の電気代と、毎年かかるお金の考え方にまとめました。
つまり、金額を軸にすると「買わないほうが安い」しか言えません。
このページは、その代わりに何が実際に減るのかを数値で置き直したものです。雪国・梅雨地域それぞれで起きやすい運用のつまずき方や、設置・換気・堆肥の出口まで含めた全体像は生ごみ処理機の運用設計ガイドにあります。
ただ、これは測る軸を間違えていたからでもあります。生ごみ処理機が減らしているのは、金額ではなく別のものです。
減るのは「重さ」で、「袋の枚数」ではありません
ここが、いちばん誤解されているところです。
生ごみは、その重さの大半が水分です。環境省の一般廃棄物の推計では厨芥類の水分率を75%、九州地区の生ごみ資源化調査では85%として計算しています。メーカーが言う「およそ8割が水分」は、この幅にちょうど収まる数字です。
乾燥式の処理機は、この水分を温風で飛ばします。だから重さは劇的に減ります。実際、当サイトで調べた12機種のうち、減量率を公表している9機種の値がこうなっています。
| メーカー | 公表している減量率 |
|---|---|
| 島産業(パリパリキュー全機種) | 重さが約1/5 |
| レコルト(RDP-1 / RDP-2) | 約1/5の重さまで軽量化 |
| パナソニック MS-N53XD | 重量を**約80%**軽量化 |
| NAGUALEP NA-2 | 生ごみを**80%**削減 |
| パナソニック MS-N25-H | 約95%軽量化(※野菜ごみの場合) |
メーカーも方式も価格帯も違うのに、ほぼ全部が「約1/5」で揃っています。営業文句が横並びになっているというより、飛ばしている対象が水分だという同じ物理に依っているからこう揃います。MS-N25-Hだけ95%と高いのは、野菜ごみだけを対象にした条件での数字だとメーカー自身が注記しているためで、他機種と同じ土俵の値ではありません。
では、ごみ袋は5分の1になるのか
なりません。ここが分かれ目です。
重さが5分の1になっても、ごみ袋の体積は同じようには減りません。袋のかさを決めているのは、生ごみよりも容器包装やプラスチックトレー、紙くずといった「軽いのにかさばるもの」だからです。生ごみは重いけれど、袋の中で占める体積はそこまで大きくありません。
メーカーのカタログには「約1/7に減容」「約1/10まで減らせる」といった表記もありますが、これは投入した生ごみが処理機の中でどれだけ小さくなったかという話で、ごみ袋全体が7分の1や10分の1になるという意味ではありません。
袋の枚数が実際にどれだけ減るかは、その家庭のごみの内訳と自治体の袋の容量で変わります。ここについては信頼できる横断データがないため、当サイトでは確定値を出していません。補助金記事に置いてある試算では、お使いの袋の枚数と単価をご自身で入れていただく形にしています。
まとめると、こうなります。
| 何が | どれくらい | 効いてくる困りごと |
|---|---|---|
| 重さ | 約8割減(9機種の公表値が一致) | 袋を持ち上げたときの重さ |
| 臭い・虫 | 水分が抜けて腐敗しない | 夏場のキッチン、コバエ |
| 袋の枚数 | 家庭ごとに差が大きく、確定値なし | ごみ袋代 |
袋の枚数では答えが出ませんが、重さと臭いでは明確に答えが出ます。
乾かした生ごみが腐らない理由
もうひとつ、金額表には出てこない性質があります。
生ごみが腐るのも、臭うのも、コバエが寄るのも、水分があって微生物が働くからです。水分を抜いてしまうと微生物は活動できなくなるので、乾燥後の生ごみは常温で置いておいても傷みません。パリパリになった状態は、乾物に近いと考えるとわかりやすいと思います。
この「置いておける」という性質が、地域によってまったく違う意味を持ちます。
住んでいる地域で、導入目的が変わります
同じ乾燥式でも、その機能が刺さる困りごとは地域で変わります。当サイトでは47都道府県を、冬の積雪と夏の湿度で4つに分けています。
冬に雪が積もる地域(14道県)
北海道・青森・岩手・秋田・山形・福島・新潟・富山・石川・福井・長野・岐阜・鳥取・島根。
ここでの主題は、集積所まで行く回数です。雪の中を往復するのは、金額に換算しにくいけれど確実に重い負担です。乾かした生ごみは腐らないので、次の収集日まで家の中に置いておけます。
ただし、はっきりさせておきたいことがあります。収集日そのものが減るわけではありません。 自治体の収集日は変わりません。変わるのは「吹雪いている日を避けて、翌週にまとめて出す」といった選び方ができるようになることです。
積雪は少ないが、冬が寒い地域(宮城県)
太平洋側で雪はそこまで積もらないものの、冬の気温が低く屋外のコンポストは発酵が鈍ります。室内で完結する乾燥式なら、季節を問わず同じように使えます。
夏の湿度がとくに高い地域(4県)
高知・宮崎・鹿児島・沖縄。
ここでの主題は、臭いとコバエです。夏場に生ごみを数日置くと確実に傷みます。乾かしてしまえばそこは止まるので、金額よりもこちらが導入理由になりやすい地域です。
夏に蒸し暑くなる地域(20都府県)
茨城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・愛知・三重・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島・福岡・佐賀・長崎・熊本・大分。
程度の差はありますが、方向は上と同じです。夏場の数日ぶんの生ごみをどうするか、が判断材料になります。
気候の条件が穏やかな地域(8県)
群馬・山梨・滋賀・岡山・広島・山口・香川・愛媛。
気候要因が弱いぶん、重さと処理量が主な判断材料になります。ごみ袋を持ち上げるのがつらい、という困りごとがあるなら、そこは確実に変わります。
処理量は、世帯人数のぎりぎりを狙わないほうが安く済みます
最後に、機種を選ぶときの実務的な話です。
12機種の1回あたり処理量を並べると、はっきり3つの帯に分かれます。
| 機種 | 1回あたり | 目安の世帯 |
|---|---|---|
| パナソニック MS-N53XD | 約2,000g(1日最大8,000g) | 3〜5人以上 |
| レコルト RDP-1 | 約1,500g(約3L) | 2〜4人 |
| 島産業 PPC-11 / PPC-15 / PPC-51 | 約1,000g | 1〜5人 |
| レコルト RDP-2 | 約750g(約1.5L) | 1〜2人 |
| 島産業 PCL-31 / PCL-33 / PCL-35 / PCL-35F2 | 約700g(約2.0L) | 1〜3人 |
| パナソニック MS-N25-H | 約700g(約1.8L) | 1〜2人 |
| NAGUALEP NA-2 | 約2.5L(重量表記なし) | 表記なし |
設置場所や買い替えまで含めた選び方は運用設計ガイドのほうが詳しいので、そちらもあわせてご覧ください。
処理量が足りないと、1日に2回まわすことになります。すると電気代も消耗品の消耗も倍になります。世帯人数のぎりぎりを狙って小さい機種を選ぶと、本体価格で数千円浮かせたぶんを、毎年のランニングで取り返されることになりかねません。
なお NAGUALEP NA-2 だけは公表が容量2.5Lのみで重量表記がないため、他機種と同じ土俵での比較ができません。この機種を検討する場合は、容量のほうで見比べてください。
まとめ
- 乾かすと生ごみの重さは約8割減る。9機種の公表値が一致している、めずらしく揃った数字です
- ただしごみ袋の枚数はそれほど減りません。カタログの「約1/7に減容」は処理機の中の話で、袋全体の話ではありません
- 水分が抜けると腐らないので、次の収集日まで家の中に置いておけます
- 雪の多い地域では集積所へ行く回数、蒸し暑い地域では臭いとコバエ、それ以外では重さが、いちばん効いてくる困りごとです
- 金額だけで判断すると、どの地域・どの機種でも持ち出しが残ります。詳しくは電気代と毎年かかるお金の考え方をご覧ください
数値はすべてメーカー公表値にもとづく概算で、当サイトによる実測ではありません。投入する生ごみの種類と水分量によって、実際の値は動きます。